「SID 2009」の展示会場では,今回も「Samsung」のブースに多くの参加者が訪れ賑わっていた。例年に比べると参加者全体が少ないおかげで,余裕を持ってじっくり見ることができた。これまで毎年,「Samsung SDI」と「Samsung Electronics」の両社が競い合うように向き合って展示していたが,今年は凱旋門のような形のブースで右の柱の壁面が「Samsung Mobile Display」,左の柱の壁面が「Samsung LCD」という形で,双方の境界を感じさせない調和のとれたデザインが印象的だった(図1)。おそらく,Samsungグループ内でのそれぞれのミッションが明確になってきたのだろう。良い形でシナジー効果が現れていると感じた。

図1 Samsungの展示ブース
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アクティブ型有機EL技術で圧倒的な強さ

 Samsung Mobile Display Co., Ltd.はアクティブ・マトリクス型有機ELパネルの数多くの製品と開発品を展示しており,アクティブ型有機EL技術における圧倒的な強さを見せていた。

 まずは,ブース入り口正面のテレビ向け31型フルHD有機ELディスプレイが美しい(動画1)。今回は論文発表もあり(論文番号:53.4),その技術の一部が公開された。ボトム・エミッション方式でマイクロキャビティ構造を採用し,NTSC比107%の色再現範囲を実現している(図2図3)。昨年のSIDの展示では輝点欠陥が目立ったが,今年の展示ではそのような欠陥も減っており,美しさに磨きがかかっていた。


動画1 31型フルHD有機ELディスプレイ

図2 31型有機ELパネルに導入した技術
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図3 31型有機ELパネルの性能
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 その隣には,2台のテレビ向け14型有機ELディスプレイが展示されていた。画素数は960×540で,フルHDの1/4である。ボトム・エミッション方式でマイクロキャビティ構造を採用している(図4図5)。同社は昨年まで,トップ・エミッション方式で画素数がWXGAのパネルを展示していた。今回,より生産性の高い仕様に変更しているのが分かる。隣に31型があるために存在感が薄いように感じてしまうが,実は非常に薄型で狭額縁のコンパクトなモジュールに仕上がっており,欠陥も少なく商品化が近いことを予感させる仕上がりだった(動画2)。

図4 14型有機ELパネルに導入した技術
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図5 14型有機ELパネルの性能
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動画2 14型WXGA有機ELディスプレイ